プラスチック資源循環促進法をわかりやすく解説!企業の対応や罰則、今後の流れについても

2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法。

使い捨てのスプーンや歯ブラシ等12品目が削減対象となるなど、私たちの生活に大きな変化をもたらした法律ですが「企業としてどのように対応すべきかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?

プラスチック資源循環促進法に応じないからといって罰則が与えられることはありません。しかし、取り組みが遅れることで企業イメージの低下につながる可能性があります。

そこで本記事では、プラスチック資源循環促進法の概要と企業の対応について解説します。法律制定の背景についても触れていますので、より深くプラスチック資源循環促進法を理解したい方はぜひ最後までご覧ください。

【2022年4月施行】プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)とは?

プラスチック資源循環促進法とは製品の設計から廃棄物の処理まで、ライフサイクルのすべてのプロセスでプラスチック資源を循環させるために、2022年4月に施行された法律です。

正式な法令名は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」ですが「プラスチック資源循環促進法」または「プラスチック新法」と呼ばれています。

ここではプラスチック資源循環促進法が制定された背景と、法律の概要をわかりやすく解説します。

プラスチック資源循環促進法が作られた背景

軽く丈夫で扱いやすく、安価で生産できることから、私たちの生活のあらゆる場所に活用されているプラスチック製品。

しかし一方で、プラスチックごみ(=廃プラスチック)が適切に処理されずに廃棄されてしまう「廃プラスチック問題」が深刻化しています。なかでも「海洋プラスチック問題」は国際的にも関心が高まっており、全世界で取り組むべき課題として各国で規制が行われています。

アメリカのマッキンゼーアンドカンパニーと環境保護団体オーシャン・コンサーバンシーが2015年に発表したレポート(※1)によると、すでに世界の海に流出しているとされるプラスチックの量は1億5,000万トン以上。さらに2016年の世界経済フォーラムの報告書(※2)では年間800万トンのプラスチックが新たに海に流出していると推定されており、2050年には海で暮らす魚の重量を上回る試算も発表されています。

このままプラスチックごみが増え続ければ、生態系への悪影響に加え、漁獲量の減少や、プラスチックごみを誤食した生物を人間が食べることによる健康被害も無視できません。

加えて気候変動問題、諸外国の廃プラスチック輸入規制強化などの対応を契機として、限りある資源を循環させ、長く維持する「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の考えに基づいたプラスチック資源循環促進法が施行されました。

※1:Stemming the Tide:Land-based strategies for a plastic-free ocean|McKinsey & Company and Ocean Conservancy (2015)

※2:The New Plastics Economy Rethinking the future of Plastics|WORLD ECONOMIC FORUM(2016)

プラスチック資源循環促進法の原則は「3R+Renewable」

プラスチック資源循環促進法の基本原則は「3R+Renewable」です。

「3R+Renewable」とは、Reduce(リデュース:ごみを減らす)、Reuse(リユース:繰り返し使う)、Recycle(リサイクル:再利用する)の3つのRにRenewable(リニューアブル:再生可能な資源に替える)を加えた総称のこと。

Renewableの取り組みとしては、たとえばプラスチック製のレジ袋をバイオマスプラスチック製に替えることが挙げられます。

バイオマスプラスチックはワンウェイ(使い捨て)のプラスチックとは違い、再生可能な原料から作られ、微生物による分解が可能な素材。日本では2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入する目標を立てています。

このように、環境に負荷を与える素材を循環型の素材に置き換えるのがRenewableの考え方です。プラスチック資源循環促進法では、3R+Renewableを基本原則として掲げることで、そもそもごみを出さない設計をめざしています。

プラスチック資源循環促進法は製品の設計~処理までに関わる自治体・事業者が対象

前述の通り、プラスチック資源循環促進法は製品の設計から廃棄物の処理まで、ライフサイクルのすべてのプロセスでプラスチック資源を循環させるための法律です。

よって、対象者はプラスチック製品を製造する事業者から、消費者にプラスチック製品を提供する小売・サービス事業者、プラスチック資源の分別収集・リサイクルを行う自治体・処理業者、産業プラスチックを排出する事業者など多岐にわたります。

出典:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律|一般消費者向け概要資料|環境省

また事業者や自治体だけでなく、消費者もプラスチック製品を選び、減らし、リサイクルする工夫が必要です。たとえばマイバッグやマイ箸、マイタンブラーを利用する、プラスチック製品が不要の場合は提供を辞退するなど、社会全体でリサイクル資源を循環させることが求められています。

プラスチック資源循環促進法の5つの措置事項と企業に求められること

プラスチック資源循環促進法では「設計・製造」「販売・提供」「排出・回収・リサイクル」の3つの段階において、5つの個別措置が設定されています。

ここでは個別措置の詳細と、それぞれの措置で企業に求められることを解説します。

  • 環境配慮設計指針の策定
  • 12品目の削減など、ワンウェイプラスチックの使用を合理化
  • 市区町村の分別収集・再商品化を促進
  • 製造・販売事業者等によるプラスチック自主回収を促進
  • 排出事業者の排出抑制・再資源化を促進

1. 環境配慮設計指針の策定

商品ができる前の設計段階で、事業者が努めるべき環境配慮設計指針を国が策定しています。指針に適合すると認定されれば、製造設備への支援や国による物資調達の対象となります。

■企業に求められること

下記の環境配慮設計指針に従って製品設計に努める必要があります。

プラスチック使用製品設計指針

具体的には「プラスチック資源の減量化」「包装の簡易化」「プラスチック以外の素材への代替」といった製品構造・材料の工夫に加え、製品の構造や材質名などの公表や、関係する事業者・自治体との連携など、製品設計にかかわるすべての段階で取り組みや配慮を行うことが義務づけられました。

2. 12品目の削減など、ワンウェイプラスチックの使用を合理化

コンビニやホテルで提供されるワンウェイ(使い捨て)プラスチックの削減に向けて取り組むべき基準が策定されました。さらにワンウェイプラスチックを前年度に5トン以上提供し、取り組みが著しく不十分な事業者に対して、勧告・公表・命令が実施されます。

■企業に求められること

使い捨てのスプーンやストローなど、下記12品目について削減の対策を講じる必要があります。

対象商品(12品目) 対象業種
  • フォーク
  • スプーン
  • ナイフ
  • マドラー
  • ストロー
  • 各種商品小売業
  • 各種食料品小売業
  • その他の飲食料品小売業
  • 無店舗小売業
  • 宿泊業
  • 飲食店
  • 持ち帰り・配達飲食サービス業
  • ヘアブラシ
  • くし
  • かみそり
  • シャワーキャップ
  • 歯ブラシ
宿泊業
  • ハンガー
  • 衣服用カバー
洗濯業

具体的な対策としては①提供時の対策 ②提供する製品の対策 の2つが挙げられます。

①提供時の対策

  • プラスチック製品の有料化
  • 利用を辞退する消費者に対するポイント還元
  • 提供時に消費者の意思を確認
  • 繰り返し使用を促す

②提供する製品の対策

  • 軽量化または肉薄化された製品の選択
  • 商品・サービスに合ったサイズの製品の提供
  • 繰り返し使用が可能な製品の提供

3. 市区町村の分別収集・再商品化を促進

これまで燃えるごみ等として収集されていた、プラスチック容器包装廃棄物以外のプラスチック使用製品廃棄物を再商品化する仕組みが設けられました。

本制度により、市町村区は収集したプラスチック使用製品廃棄物を、状況に応じて下記2つの方法を用いて再商品化できます。

  • 容器包装リサイクル法に規定する指定法人(公益財団法人日本容器包装リサイクル協会)に委託し、再商品化を行う方法
  • 市区町村が単独で又は共同して再商品化計画を作成し、国の認定を受けることで、認定再商品化計画に基づいて再商品化実施者と連携して再商品化を行う方法

出典:市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ|環境省

■企業に求められること

国が定めた特定事業者にはプラスチック再商品化の義務があり、容器包装帳簿をつけ、再商品化義務量を把握する必要があります。具体的な義務履行ステップ(指定法人ルート)を農林水産省の資料より抜粋しました。

出典:容器包装リサイクルの手引き|農林水産省

なお、下記に該当する小規模事業者に関しては、再商品化義務の適用が除外されます。

主たる業種 売上高 従業員数
製造業等(A) 2億4,000万円以下 かつ20名以下
商業、サービス業(B) 7,000万円以下 かつ5名以下

※(A)(B)どちらの事業も行っている場合は、売上高の大きい方で主たる業種が決定

4. 製造・販売事業者等によるプラスチック自主回収を促進

製造・販売事業者等が「自主回収・再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けることで、廃棄物処理法の業許可がなくても、使用済プラスチック使用製品の自主回収・再資源化事業を行うことができるようになりました。

プラスチック使用製品の回収拠点が増えることにより、消費者が分別・回収に協力しやすくなる狙いがあります。

■企業に求められること

下記の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行規則」、「分別収集物の基準並びに分別収集物の再商品化並びに使用済プラスチック使用製品及びプラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化に必要な行為の委託の基準に関する省令」及び「自主回収・再資源化事業計画認定申請の手引き」を参照し、自主回収・再資源化事業計画を作成します。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行規則

分別収集物の基準並びに分別収集物の再商品化並びに使用済プラスチック使用製品及びプラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化に必要な行為の委託の基準に関する省令

自主回収・再資源化事業計画認定申請の手引き

5. 排出事業者の排出抑制・再資源化を促進

排出事業者等が「再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けることで、廃棄物処理法の業許可がなくてもプラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化事業を行えるようになりました。

廃棄物処理が容易になり、リサイクルを促進できる狙いがあります。

■企業に求められること

下記の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行規則」、「分別収集物の基準並びに分別収集物の再商品化並びに使用済プラスチック使用製品及びプラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化に必要な行為の委託の基準に関する省令」及び「自主回収・再資源化事業計画認定申請の手引き」を参照し、再資源化事業計画を作成します。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行規則

分別収集物の基準並びに分別収集物の再商品化並びに使用済プラスチック使用製品及びプラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化に必要な行為の委託の基準に関する省令

自主回収・再資源化事業計画認定申請の手引き

プラスチック資源循環促進法で求められる対応は努力義務であり、罰則はない

2022年現在、プラスチック資源循環促進法で求められる対応は努力義務であり、仮に従わない場合でも罰則はありません。

しかし、いまや企業としてSDGsに取り組むことは社会的責務であり、大手企業・中小企業問わず、すべての事業者が取り組むべき課題ともいえます。そのため、企業がプラスチック資源循環に取り組まないことによって、企業イメージ低下につながる可能性があることは覚えておきましょう。

企業のSDGsの取り組みについては、下記の記事でも解説しています。

関連記事:(※「SDGs 企業 取り組み」記事のタイトルと公開ページのテキストリンクが入る想定です)

プラスチック資源循環促進法を理解することはビジネスチャンス創出にもつながる

プラスチック資源循環促進法は、持続可能な社会を作るための第一歩として制定されました。

日本におけるプラスチック資源循環の取り組みは、諸外国に遅れをとっている状態。そのようななか、企業がいち早くプラスチック資源循環に対応することは大きなブランディング効果を生むでしょう。また新たな生活様式に適応する新商品の開発など、ビジネス創出のチャンスも期待できます。

今後もSDGsへの関心はさらに高まりを見せることが予想されます。プラスチック資源循環促進法を理解し、自社のプラスチック資源循環への対応や商品・サービスの原料、提供方法などを見直してみてはいかがでしょうか。

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